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接触皮膚炎 パッチテストのススメ

[2023.02.23]

こんにちは。院長の牧野です。

最近、手荒れの方が多く受診されます。手荒れは、手湿疹や主婦湿疹と呼ばれることがありますが、発症するメカニズムから言えば接触皮膚炎です。接触皮膚炎とは皮膚がなんらかの刺激物質やアレルゲンと触れることで炎症が起きる状態です。接触皮膚炎は大まかに刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎に分類されます。

①刺激性接触皮膚炎

私たちの皮膚には様々な刺激から守るバリア機能が備わっていますが、この機能の許容範囲を超えた強い刺激に触れてしまったときに起こる炎症を刺激性接触皮膚炎といいます。これは原因物質自体がもつ刺激によって起こるため、アレルギーに関係なく誰にでも起こる可能性のある疾患です。酸やアルカリ(灯油など)、溶剤(アセトンなど)、石鹸、植物や野菜、体液(尿や唾液など)が原因となります。刺激性皮膚炎はドライスキンのある方がになりやすく、例えば、頻繁に洗うことで起こる手湿疹やよだれによる赤ちゃんの顔の湿疹、シャンプーを使いすぎて起きた頭の湿疹などです。

②アレルギー性接触皮膚炎

 アレルギー性接触皮膚炎は刺激性接触皮膚炎と異なり、主に微量の低分子の抗原であるウルシ、ニッケルなどのハプテンが皮膚について皮膚炎を起こします。アレルギー性接触皮膚炎の発症には抗原にかぶれてしまう感作相とかぶれた後に抗原が再度皮膚に接触して炎症を起こす惹起相の2相があるとされています。抗原に感作されたアレルギーのある方のみかぶれが起こります。例えば化粧品、毛染め、整髪料、植物、ゴム、手袋、抗菌薬、外用剤、貼り薬、消毒液、香水、保存剤、金属(ニッケル、コバルトなど)などです。女性の場合、顔の湿疹のかなりの部分を化粧品・整髪料・染毛剤(毛染め)による接触皮膚炎が関係しています。

接触皮膚炎の治療は原因の除去です。強いステロイド外用剤を使っても症状は改善されません。

パッチテスト

パッチテストはアレルギー性接触皮膚炎の原因となる物質を調べるために行います。アレルギー性接触皮膚炎は血液検査で調べることができないため、パッチテストが有効です。可能性があるものがはっきりしていれば簡単なのですが、大抵は、髪染めかな、ゴム手袋のゴムかなとはっきりしないことがほとんどです。そこで、よく行われているパッチテストがパッチテストパネルSと呼ばれる検査です。パッチテストパネルSは、日本で多いアレルギーのうち以下の22種類のアレルゲンに対応したテストができます。

本剤に含まれるアレルゲン

種類

暴露源

ニッケル

金属

アクセサリー(ピアスなど)、腕時計、ベルトのバックル、硬貨、携帯電話、ビューラー、歯科用金属など

ラノリン

油脂

つや出し、化粧品、クリーム、塗り薬など

フラジオマイシン

医薬品

塗り薬、目薬

カインミックス

医薬品

塗り薬、局所麻酔剤

香料ミックス

香料

食品、キャンドル、香水、化粧品、塗り薬、石鹸、トイレットペーパーなど

ロジン

樹脂

インク、ニス、塗料、ワックス、化粧品、接着剤、滑り止め(野球のロジンバッグ)など

パラベンミックス

防腐剤

食品、化粧品、塗り薬、シャンプー、リンス、石鹸など

ペルーバルサム

樹脂

香料、化粧品、アロマオイル、ソフトドリンク、日焼け止めなど

金属

貴金属、アクセサリー、電子部品、歯科用金属など

コバルト

金属

歯科用金属、セメント、インク、絵具、鍵、ファスナー、エナメル、ビタミンB12製剤など

p-tert-ブチルフェノール

ホルムアルデヒド樹脂

樹脂

ゴム・革製品(靴、ハンドバック、時計のベルト、帽子、ベルトなど)の接着剤など

エポキシ樹脂

樹脂

電化製品の接着剤や塗料、コーティング剤など

カルバミックス

ゴム硬化剤

ゴム製品(ブーツ、靴、ゴーグル、イヤホン、医療用手袋など)

黒色ゴムミックス

ゴム老化防止剤

黒色のゴム製品(タイヤ、ベルト、マスク、ホース、手袋、ゴーグルなど)

イソチアゾリノンミックス

防腐剤

外国製化粧品、シャンプー、リンス、ウェットティッシュ、工業用防腐剤など)

メルカプトベンゾチアゾール

ゴム硬化剤

ゴム製品(ブール、靴、ゴーグル、マット、ウェットスーツ、医療用手袋など)

パラフェニルレンジアミン

染料

おしゃれ染め、白髪染め、織物、・毛皮などの染料、インク、ヘナタトゥーなど

ホルムアルデヒド

防腐剤

衣類の仕上げ剤、接着剤、塗料など

メルカプトミックス

ゴム硬化剤

ゴム製品(ブーツ、靴、ゴーグル、マット、ヘッドフォン、コード、ホース、消しゴムなど)

チメロサール

防腐剤

ワクチンなどの注射用製剤

チウラムミックス

ゴム硬化剤

ゴム製品(ブーツ、靴、接着剤、プラグ、ゴーグル、マット、ヘッドフォン、ホースなど)

例えば、美容師さんが手湿疹で検査をされて、ニッケルやパラフェニルレンジアミンで陽性になれば、染めているお客さんの髪を触ったり、ステンレス(鉄、ニッケル、クロムなどを混ぜた合金)のハサミを触ったりして、かぶれていると推測できます。

パッチテストパネルSに金属アレルギーを調べる金属パッチテストを追加すると、よりたくさんの可能性を調べる事ができます。

パッチテストはアレルギーが疑われる手湿疹や、髪染めのかぶれ、慢性の湿疹を生じている人などよくわからない湿疹を生じている人に受けていただきたい検査ですが、1週間で4回受診する必要があります(下記パッチテストの手順参照)。また汗をかきやすい夏は正確に検査ができないため実施していません。

 

○パッチテストの手順

検査当日に上背部に試薬を含ませたシール状のパッチを貼ります。

2日後にパッチ除去後、第1回目の判定を行います。

3日後もしくは4日後に第2回目の判定を行います。

7日後に第3回目の判定を行います。

○パッチテストパネルSの費用

3割負担で約5,800円、初診料、再診料などは別途かかります。

パッチテストを希望される方はお気軽にお申し付けください。準備するものはありません。ただし、症状をみて検査をするべきか判断させていただきますので、その点はご了承ください。また、パッチテストSの特定の抗原のみを検査することもできないこともご了承ください。

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